薬局で”花粉症の薬下さい。”と言った僕に、 店員さん(薬剤師さん?)がこんなことを言った。 ”結局、薬じゃ治ったことにはならないんですよ。こういうのはどうですか?” 見ると変なポンプのような物があった。 ”鼻を洗浄する機具ですよ。” そう、いわゆる鼻うがいってやつだ。 実は僕は既に鼻うがいは人に勧められて試していた。 湯のみ茶わんに食塩をいれてぬるま湯で溶かして、 鼻からすすって口から出すという方法をしばらく試していた。 しかしながら、これがまた、”痛い”のである、 ”目に入ったぞ、おい!”というような調子で涙がでるし、 だいたい自らの力で吸い上げて液体を鼻に入れて口からだすなんていうのはかなりの特殊技術で、 とてもうまくはできなかった。 出し損ねた塩水が鼻孔の中でグルグルしたりして、 ”これなら花粉症の方がまだましだ!”というような心境になって数週間でやめてしまった。 しかしながらその機具が優れていたのはその、 ”自らの力で食塩水を吸い上げるという特殊技術”をユーザーに求めていない点だった。 手動のポンプ式になっていたので、”吸い上げる”という技術はいらなかったのだ。 店員さんは、 ”わたしも使っています”という常套句でさかんにお勧めしてくれた。 勧められると嫌になるという困った性格の僕はその時は、 ”薬でいいですよ。”とか言って、その日はどこかのメーカーの錠剤を買って帰ったのだが、 帰宅してからどうしてもそのポンプが気になってしまった。 チャチな見た目の割に値段は結構した。しかしどうしても試したかった。 カフェイン野郎になっていても仕方ないことは僕自身が一番知っていた。 バイト生活の僕にとってはかなりの金額であったが、 かけてみることにした。 花粉症対策のうち、”手術”などは金額的にできないし、 音楽とバイトを続ける上で”規則正しい生活””バランスのよい食事”などができるわけがなかった。 できることからやるしかなかった。 そのポンプを購入し、早速鼻うがいを実行した。 しかし、やはり最初の1ヶ月くらいは、どうにも違和感があって辛かった。 しかしながらだんだんと自分もコツをつかんでくる頃になると、 鼻を洗浄することが気持ちよくなっていった。 ”ああ、なんと僕は今まで大量のゴミを鼻の中にいれていたのだろう。” と思うようになった。その年は遂に花粉症は発症せず何年ぶりかで、薬なしで生活ができた。 一度鼻孔がきれいになると”なーんかゴミたまってんなあ”という時が分かるようになった。 鼻がムズムズするという感覚が出てきたのだ。 それまではもう慢性的に鼻が詰まっていたので、 何の感覚もなく”ムズムズ”どころではなかったのだ。 それ以来、 歌の練習にもますます身が入った。本当に大きな転機となる出来事だった。 (ちなみに僕が使っているポンプはハナクリーンというやつだ。)