僕が歌舞伎町で見たもの


ここでは、かつて僕が、遭遇した歌舞伎町での出来事を書き記す。 当時僕は、何かことある毎にいろんな理由をつけて新宿歌舞伎町に弾き語りに行っていた。 ここに記されている出来事は全て事実である。 当時の僕がこの夜を忘れたくないばっかりに必死になってノート9ページに渡って書き記したものを、 現在に僕が忠実に再録したものだ。 それは、まだ、僕が定期的なライブ活動を始めるよりも前のことだった・・・。

 1992年12月8日夜、新宿に行った。 路上ミュージシャン達はみんな上手で僕の出る幕はなかった。 で、いつもの通りコマ劇前に行ってみた。 久々に弾き語りの人々がたくさんいる。 スタジアムの入り口の階段のところに、 3、4人のギターを持った人々とその友達みたいなやつらが10人位たむろして歌っていた。 一瞬”仲間に入ろうかな?”と思ったが、 ”あんな群れていてたまるか。”と思って噴水の前に腰をおろして、 一人で彼らと向かいあうようにして、 ”ボリュームをあげよう・・”と歌いだした。 ずっと、ずっとひとりぼっちでうたっていた。 ”壊れていく少年”を歌っていたら、 いつの間にか短かめの金髪の男とひげもじゃの優しそうな男が 俺のうたにあわせて踊っていた。 つづいて”家出のうた”を歌うと金髪の奴が俺に質問した。 ”大人になんかなりたくない、家に帰りたい・・って歌っているけど、 家っちゅうのはどこのことなんですか?”と。 こんな風に詞について質問されたのは初めてだった。 ”ああ、聴いていてくれたんだ。”と思った。 そいつら二人は俺に缶コーヒーを買ってきてくれて、こう言った。 ”上手いとか、下手とかよりもよ、一人でやってるちゅうのに俺はひかれたよ。” ”実はなあ、俺も似たようなことやるんやけど、 俺、恥ずかしがり屋じゃけん、一人じゃでけんのや” ひげもじゃの奴が突っ込んだ。 ”恥ずかしがり屋がこんなとこで踊るんか?”

 それから俺は尾崎をうたった。 ”15の夜””Seventeen'smap”そして”scrap alley”をうたっているといつの間にか、 俺の横でコーラスをやっている奴がいた。 髪が茶色というか赤というかの奴で目つきが妙に鋭かった。 どうもこいつも相当、尾崎が好きらしい。 それから金髪の奴と赤髪の奴二人はどこかに行って、 ビールとムチャクチャ強い酒とピーナッツとサッポロポテトとバナナとイチゴを手に入れてきた。 噴水の前で4人で酒盛りを始めた。 赤い髪の奴が”街路樹、うたってくれよ”と言った。 ”踊らないで静かに聴こうぜ。”とも言った。 俺はうたった。歌い終わると赤い髪の奴は言った。 妙に真剣な顔つきで、 ”この歌はさあ、尾崎がヤクで捕まって、出てきて、東京ドームで歌ってくれたんだよ。” ”俺はさ、あいつらみたいに(と、周りの人達を一瞥して)、 ナニゲに生きているんじゃないんだよ、今を生きてるんだよ、今を感じてんだよ。 今夜を大切に楽しもうぜ。” 格好いいやつだった。

 けっこう酔ってきた。噴水の前に酒がずらっと並んでいる。 ”実はさあ、俺も音楽やってるんだよ。メタリカとか聴く?”と、 赤い髪の奴が言った。 俺はそいつにギターを渡した。 ”人のギターじゃうたえねえよ”などとそいつは言った。 気がつくと、後ろの方にバイクのヘルメットを持った野郎がいた。 ”まあ、飲めよ”と仲間に引き入れる。 金髪の奴がギターを持って歌い出した。 ギターをかき鳴らし、かすれた声を出し、佐野元春状態で路上に飛び出して歌った。 俺達も一緒に踊った。 赤い髪の奴がギターを持った。 上手いのかと思いきや、とっても前衛的というか、要するに下手くそな音を出した。 正確に言うと、まともに音は出て無かった。 ”ごめんな、下手くそで・・。”変な奴だった。

 いつの間にか松原桃太郎と山口良一をあわせておかっぱ頭にしたような奴と、 その友人が噴水のヘリに座っていた。 ”歌ってくれ!”と言った。 ”ボリュームをあげよう・・”と、俺は再び、三たび、歌った。 ”うーん、この歌はまじめな映画より難しいよ”などとぬかしていた。 話しによるとこいつらは日芸で映画を撮っている奴らだった。 赤い髪のやつと金髪が自販機の横で何かモゾモゾやっている。 いつの間にか仲間がメチャメチャ増えていた。 大阪弁を喋る革ジャンの16才の姉ちゃん、 ダンス甲子園に出ていたコケコッコーなんとかみたいな奴、 むさっくるしいアンジーみたいな奴なブルース系の奴。 誰かが”ビールでも飲もうぜ、誰かついてきてくれ”と、 言ってどこかへ去って戻ってきた。そいつは生ビールをジョッキでたっぷり持ってきた。 ”店のジョッキだから大事に。壊したりするなよ。” と、言っていたが結局そのジョッキは粉々になってしまった。

 ひげもじゃの奴が、”あれ、この兄ちゃんメリケン粉食ってる。” と言い出した。 ふりむくと、赤い髪の奴が白い粉を雑誌の切れ端の上に広げて、 なめるのか吸い込むのかしていた。 ”これ何だか分かるだろう?”・・・どう見ても”ヤク”だ。
”・・ああ”
”内緒にしていてくれ。誰にも言わないでくれ。”
”ああ、内緒にしておくよ”・・マジかよー、確かにこいつの目つきは変だ。

 目の前にかわいい女の子が二人座っている。 俺はジョンの"imagine"をうたっている。女の子をナンパしようと男が近づく。 いやがる女の子達、怒り出し力ずくでナンパしようとする男。 緊張した空気が流れる。 ”やあ、全然平和じゃないなあ”と俺はうたを止める。 女の子が男のカバンを奪い噴水のむこうに放り投げた。 怒り狂い罵声を浴びせて去っていく男。 ”どないしたんや、大丈夫か?” と大阪弁の少女が駆け寄る。 ”ナンパされてむかついただけよ。” と、”それじゃあ、平和への祈りを込めて”と前置きして、 続きを歌い始めた。 "You may say I am a dreamer・・" うたい終わるとさっきナンパされかけた女の子が言った。 ”ねえ、ビートルズのmoneyってできる?” 俺は歌った。何も歌詞など知らないままに。 ただ声を張り上げ、ギターを掻き鳴らして。 コケコッコーと二人でチューニングのずれまくった "stand by me"をうたった。 金髪の奴は路上に飛び出して”アイム スーパースタ〜”と歌う。 続いて即興で歌い出す。 シオンみたいに”新宿でえ、今夜あ、であったあ、俺達があ〜” ばっちりはまってた。 さっきからコマ劇前の階段に座っていた奴らに声をかける。 ”兄ちゃん達、かたまってないで、俺達と歌おうぜえ。”
その中に一人が俺に言った。
”あの〜、文学部のスロープでうたってませんでした?”
”あれっ?もしかして早稲田?”
”ここにいる奴らは、みんな早稲田なんですよ。”
それを聞いてすかさず格好つける俺、
”ダメだよ、うちわで固まっているようじゃ。”
どうも俺達は相当異様に見えたらしい、 気がついたら早稲田の連中はどこかに去っていってた。 だけど、俺達の夜はまだまだ終わらない。

 大阪弁の姉ちゃんが俺に言う、”あいつ危ないわ、こっち連れてきてえ。” 赤い髪の奴がものすごい形相で、 真っ赤に充血した目を見開いて自販機の横にうずくまって、 コケコッコーの連れかなんかに話しかけている。 俺はかけよって”おい、こっち来いよ。”と言った。 赤い髪の奴は噴水のところに腰をかけた。 大阪弁の姉ちゃんが語り出した。
”あんた、そないなことしてたら体ボロボロになるで”
そしてそいつの額に自分の額をくっつけ、髪をなでながら言った。
”そんなことしてて楽しいか?もっと楽しいこと他にあるはずや。”
ラリっている奴にむかってここまでできるか・・!?金髪の奴が俺に言った。 ”うたえ!この場にふさわしい歌をうたってくれ!”
突然のリクエストに多少とまどいながら俺は、 ”僕が僕であるために”をうたった。それからみんなで”卒業”をうたった。 と、ラリっていたそいつが俺に言った。
”街路樹うたってくれよ・・”
俺はそいつの隣に座って真っ赤に異様に鋭い目を見つめうたった。 心を込めてうたった。本当に心を込めてうたった。 こいつの心が少しでも立ち直ることができるなら俺は何度でもうたうよ。
”足元にふりそそぐ心模様、つかまえて街路樹達のうたを・・・”
金髪の野郎がまたうたい出した。
”新宿でえ、今夜俺達い、酔っぱらうのは酒で充分じゃあ、 クスリなんかいらん!”
”そうだ!そうだ!”と盛り上がる。 金髪の奴が言った。
”この夜が、この街が、俺をうたわせたんじゃ。”

 また俺達はうたい出した。なぜか、”乾杯”なんかを大合唱してしまった。
”もうすぐクリスマスやね、今日は一足はやいクリスマスパーティーやな。”
”so this is Christmas〜!”
突然俺はうたい出した。
”ええ、選曲やなあ、兄ちゃん、なんでも出来るんやなあ。”
みんなでうたった。みんな歌詞が分からないのでラララでうたった。 もう俺のギターには3弦がなくなっていた。 ブルース系の奴が味のあるギターを弾きだす。 ボトルネックを使って、コケコッコーがあわせてギターを弾く。 ブルースセッションが始った。 酔っぱらいのオヤジがやってきて、ホイホイと踊り出した。 俺は即興でうたい出した。
”おや〜じ〜踊ってくれよお〜・・・”
けっこう強面のやつが俺達の周りをうろいついていた。
”おーい。こっち来て。一緒に飲もうぜ!”
”えっ。いいの?こんな部外者が仲間に入っていいの?”
”ああ、俺達みんな見知らぬ者同志だから。”
と、いうわけでまた、仲間が増えていった。
”俺、金が無くって帰れなくてさ・・”
俺達はまた路上に飛び出してうたっていた。 ギターを掻きならし、うたった。 もう何をうたったのかをも覚えていない。 気がつくと俺の手は切れて血が流れていた。
”うわっ、血が出てるよ、おい・・”
”兄ちゃん、兄ちゃん、指出しいや。”
大阪弁の少女が俺に言った。 俺が指を出すと、その娘は、俺の傷口の血をふいて、 バンドエイドを貼ってくれた。金髪の奴とコケコッコーが声を揃えて、 ”春夏秋冬”をうたっていた。

 俺が”I love you”をうたっていると、いつの間にか紫色の服を着た、 年齢不詳のおばさんとお姉さんの中間みたいな人が歩いていた。 で、すかさず、金髪の奴がナンパしにかかった。
”えー、あたしやってもいいけど、最近やりあきてんのよねえ〜。”
”それに下手だったらやらせ損だしねえ。”
”そないなことない、俺はベストを尽くすけん、ドゥマイベストや!”
”まあ、根性の問題もあるしねえ。””あんた、口開けてみな、” ”シンナーで歯ボロボロじゃないの?”
”そないなことない、俺はシンナーはやらんのじゃ。”
”そうだよ、さっきヤクやっている奴止めていたんだぜ。”
”そう、でもこんなこと言って悪いけど、あんたホテル代も持ってないでしょ。” ”飲み代くらいなら、あたし出してもいいけど、ホテル代ワリカンなんていやよ。”
そんなこと喋っているうちに、 パンチパーマのヤクザ系の男が3人やってきて金髪をからかっていた。
”おら、兄ちゃん、ガンバレよ。”

金髪の奴はひげもじゃの奴から金を借りて女とどこかへ消えた。
 俺達がうたっていると、どこかのおばさんが噴水に座って、 俺達を見ていた。 俺が暖かいココアを飲んでいると、女の子が俺にくっついてきた。 ”あー、寒い”と、俺の持っていたココアを握りしめて”あったか〜い”と言っていた。 ここぞとばかりに二人で歩くと、赤い髪の奴がヤクザに絡れていた。 弟分みたいなやつが、”ヤバイよ兄貴止めなきゃ”などと慌てていたので、 けっこうヤバイ状態だったのだろう。 俺と女の子が様子を伺いに近づくと、 赤い髪の奴は手で”来るな”という合図をしていた。 俺も恐かったので、どうしようかと迷っていたら、 その女の子が”行こう、行こう。”と言った。 ”あいつヤバクない?”と俺が聞くと、 ”あんなラリパッパ殺されればいいんや。”と答えた。 まさか殺されやしないだろうと思ったし、 その筋に関しては俺はド素人なので、 その女の子の言うとおりにして放っておいた。 いよいよ二人っきりに・・と思ったら、 どこからともなく”季節のないまちに〜うまれ〜”と、 コケコッコーの調子っぱずれのうたが響いてきて、 つくづく新宿は新宿だなあ、と思った。 ”せっかくナイスミーティングやったのにぶち壊しや。”などといいながら、 噴水のところまで戻ってきた。 大阪弁の少女がおばさんに話しかける。 ”オバサン、独りぼっちで座ってどないしたん? いっつもオジサンといっしょやったろ?”と、 突然そのオバサンが立ち上がった。 ”あんた、あたしが一人だからって何か文句でもでもあんのか!? あたしが一人でいて何か迷惑か!?” ”なめんじゃないよ!何か言いたいことがあったら事務所まで来な!” このオバサンは意外とヤバイ人だったんだなあ。 ”文句なんか、あらへん、ちょっと気になっただけや。” ”それなら、黙って座ってな!!” 案外あっさりとそのオバサンは去っていった。

 ”ぴいぴいぴい、ぴいぴいぴい〜”と誰かが長淵剛のうたをうたい出す。 みんなで例によって大合唱。 ところが続きが分からないので、 ”ぴいぴいぴい”のところを10回ぐらいエンドレスでうたい続けた。 ”ひいひい”いうところだった。 俺は踊りまくって”twist&shout”をうたった。 みんなで”アーアー”のハモリをやった。 金髪の奴がいつの間にか戻ってきて、 またも路上に飛び出してギターをかき鳴らした。 ピックも持たずに。 いつの間にか俺のギターは1弦と3弦がなくなり、血まみれになっていた。 金髪の奴は、当然のことながら、指から血を吹き出して、 それでもギターをかき鳴らしていた。 ”おい、あいつの指にもバンドエイド貼ってやってくれよ。”と、 大阪弁の少女に俺は言った。

 ”ウタハイイヨ、イイヨネ。”得体のしれない外人が一緒にうたっている。 ”どこから来たの?””ミャンマー”と言って、パスポートを見せてくれた。 名前も聞いたけど、とても発音できないような名前で当然忘れてしまった。 ”エーゴモシャベル、ケドニホンダカラニホンゴ。” そいつは近くのカラオケスナックで働いているとのことだった。 東池袋に友達3人と共同生活しているとも言っていた。 ”ニホン、ヤチンタカイヨ、ヒトリジャ、ダメダヨ。” またもや、”乾杯”の合唱。 ”イイノウタダネ、シッテル、イイノウタ。” まあ、おそらく”いい歌だ。”といいたいのだろう。 ”ヒトリ、トモダチ、イイノウタ。”わけの分からんことをしゃべっている。 ”キョウダケ、アッタダケ、トモダチ。” まあ、俺たちを友達だと思ってくれているらしい。 ”ねえ、知ってる日本語並べてない?” ”ニホンゴ、シッテマス、エーゴモシャベルネ。”で、 ”stand by me”かなんかをうたっていると、 本物の金髪の外人の女が3人近づいてきた。 いっしょにうたったが、相当酔っていたのか、音痴だったのか、下手くそだった。 金髪女は何だかよく知らないが、 ”アイリーン、アイリーン”と、言っていた。 ”アイリーン”という名前だったのか、 ”I lean.”と、言っていたのか、 (そう言えばフラフラ傾いていた。)よく知らないが。 大阪弁の女の子は何を知っているのかは知らないが ”アイノウ、アイノウ。”などと言っていた。 ミャンマー人が英語で何かしゃべっていたら、 金髪の女が怒りだして”fucK you!”だの、 ”kill you!”などとぬかして、 その場にフラフラと倒れた。 俺が支えてあげようと抱きとめたらさらに怒って去っていった。 腹が減っていたので、俺は残っていたサッポロポテトを食べはじめた。 ギターを持ってうたっているコケコッコーの隣に、 円いサングラスをかけて平らな帽子を被った、 やせがたで妙にクネクネした奴が座っていた。 ”なんか、あいつ変だなあ。” ”なんかクネクネしているなあ。” ”スネークマンだ!” ”あっちの系統の奴かもしれないぜ。”

 俺の持っているサッポロポテトを指さして、 ミャンマー人が突然”マメハ、カラダニイイイデスカ?”と言った。 ”確かに、まあ似てるなあ” もしかしたらこいつはけっこう笑いのツボを心得ているのかもしれない。 ”ジャンジャカジャンジャンジャンジャカジャンジャンジャン!マメ!” などとしばらくはそれで盛り上がる。 コケコッコーがうたう。”もう、今は〜彼女は〜どこにも〜いない〜” ”ソリャサミシイヨ、カノジョイナイナンテ。” ”ずっと夢え〜を見て〜あんしんしてた〜” ”ユメミタ、サビシイヨ、カナシイヨ。” ”カノジョシャシンダケ、サビシイヨ。” こういちいち歌に反応するところをみるとこいつは頭が正常かどうか分からない。 この外人をからかってうたっていると、 誰かが”もう4時半だよ、始発がもうあるぞ。”と言った。

 突然、俺は夢から覚めたようだった。 ”金髪の奴がギター汚してゴメンな。”と、言った。 俺は、”いいよ、今夜の記念だよ。” と言い終わるか終わらないうちにみんなもういなくなっていた。 金髪も赤髪もコケコッコーもブルース野郎も大阪弁の少女もミャンマー人もいなくなっていた。 ただスネークマンとその連れだけが、何も言わずにそこに座っていた。 ひげもじゃもヤクザもオジサンもオバサンも誰もいない。 空はまだ夜の色をしていた。 消え遅れた街の灯りだけが、悲しく、何も感じない冷たい女のように輝いていた。 俺の目に映るのは、空っぽの缶ビール、 粉々にくだけ散ったビールのジョッキ、 すり切れてボロボロになったギターのピック、 飲み残したホワイトマッカイのボトル、 ちぎれたギターの弦、 そして血まみれになった弦の足りない俺のギターだった。 俺は片手にギターを手にして、 もう片方の手にホワイトマッカイのボトルを手にして、西武新宿駅にむかった・・。

・・今、俺の部屋にはその夜のホワイトマッカイのボトルが置いてある。 ボトルのキャップが見つからなくて、 仕方がないのでサランラップをかけて輪ゴムで縛ってある。 もうアルコールが抜けてしまったかもしれないな。 でも俺はそれを確かめたくはない。 アルコールが抜けてしまっていたら悲しすぎるから。 この酒を飲みほしたら、あの夜みたいに楽しくなれるだろうか・・。 そんなことはないだろう。 あの夜は夢だったのかもしれないな。 こんな楽しいことが、この世にあるわけないもの。 ・・でも夢じゃないよ。 この酒が、このギターの血がその証拠じゃないか!何にせよ。

”こんなに楽しかったのは、生まれて初めてだったよ!!”

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