〜そんなに遠いかな?〜

 小学校のころこんな決まりがあった。”校区外には出てはいけません”。つまり自分の通っている校区から出るには保護者と一緒でなければならなかったのだ。ちょっと離れた街なかのおもちゃ屋にガンダムのプラモを買いに行くのさえもルール違反だった。子供の頃は、学校が違う=世界が違う、だった。だから、好きだったあの子が転校する、(好きだったあの子に限って転校するものだったりした)なんて事態がおこれば、永久の別れを宣告されたのに等しかった。たとえそれが、隣の校区へ引っ越しするって程度のことだったとしても。かくいう僕も何度か引っ越しをしているので、住み慣れた世界から去っていく寂しさを何度か味わっている。今思えばたかだか新潟市の中で西から東にいったというだけのことなのだが、いろんな人たちとのつながりが途切れてしまった。今思えば、お互いにそんな遠くに行ったわけでもなかったのに、もったいなかったと思う。最近、距離感って何だろうって思っている。ほんの数年前の僕は、まさか自分が地方でライブをやるようになるなんて思いもしなかった。ただ東京のライブハウスで、という発想しかなかった。ほんのちょっとだけ、手間を惜しまず電話かけたり、デモテープを送るだけで、もっとたくさんの人に自分のうたをきいてもらうチャンスを得ることができたのに。それに気づいたのは、僕と同じ年くらいの仲間が”会社の出張で大阪へ、”とか当たり前のように言うのを聞いたのもきっかけのひとつだったかもしれない。

 また、距離感ということでは、最近僕は、電車よりも好んで自転車に乗っている。東京は確かに電車の本数も多くて路線も多いので、便利がゆえにずっと電車を利用していた。ところが、よくよく見ると実は、電車で行くと何度も乗り換えをしなければたどりつけない場所でも地図上では、すぐ近くにあるポイントが存在していた。意外に、僕のうちからもそういう場所がたくさんあった。自らのリフレッシュと、移動効率などを考えて自転車を買った。今まで、電車ではものすごく行きづらかった場所でも気軽に行けるようになった。(油断していると、いい年をして雨に打たれてズブ濡れで帰宅、などという高校生の頃のような経験をしてしまったりもするのだが、それはそれで、楽しむことにしている。)

 さらに最近、僕の距離の概念をくつがえすようなことがあった。インターネットである。まだまだ初心者であるのだが、すっかりハマってしまった。ご無沙汰していた友達ともメールで頻繁に連絡をとりあえるようになったし、なによりも今までの環境では、出会うことのなかった世界の人たちとも出会えるようになった。この前は、ネットで知合った愛媛県在住の人にCDを送るなんていうこともやった。僕は、自分の活動を知ってもらうためにものすごい手間と時間をかけてきた。チラシを作ったりして街のスタジオに貼ってもらったり、強引に客引きやってみたり。それはとてもいい経験だったけど、成果としては今ひとつだった。ネット上では、基本的に文字中心のメディアだし、匿名で関係を始められるので、逆にその人の心そのものと接することが出来る気がする。街で今日初めて出会った人と深い話しをすることなんて、よほどのナンパ師か、サギ師か、教組でなければ、できないことだろうけど、ネット上ではそれができる。もちろんネットだけの関係というのも寂しいと思うし、ネットだけで僕の音楽を伝えるのは難しいだろうから、ネットがライブに来たり、CDを聴くきっかけになったらいいなと思っている。

 いろいろ書いたけれど、結局、距離なんてその人の心の持ちようで変わるものなんだと思う。自分で上手な交通手段や連絡手段を見つけて利用することでいくらでも変わるんだと思う。それは、”あの人までの距離”だったり”夢までの距離”にしたって同じだと思う。”遠いから”なんて言ってあきらめる前にまだやれることがきっとあるはずだ、って僕は信じている。

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