箱を探す


ボーカルブースの制作を思い立ち、まず考えたのが、”入れ物本体から作ったらど偉いことになる。”ということでした。できれば、ベニアやコンパネを自分で釘打ちするのは避けようと思いました。 そこで既製のものを応用することにして、何か手ごろな、人間一人が入れるようなサイズの物はないか考えました。そんなことを考えながら見る街はいつもと違って見えました。目に映る全てがボーカルブースに見えてしまいました。でも、よくよく見るといろいろ使えそうなものがありました。

例えば「物置き」。でも、値段はそれなりに高く、また基本的に外に置くように作られているようで、脚の部分がブロックで作られており、あまり室内用での使用には適当でないように見えました。また、頭の中に浮かんだのが、「冷蔵庫」。小さい頃、学校の先生が、
”空き地などに冷蔵庫が捨ててあっても決して中に入ってはいけません。” と教えてくれたことを思い出しました。確か、
”中で泣いても叫んでも、外には聞こえない”
って言ってたよなあ。これは、いいかも。でも、その後すぐに先生は、

”中から開けることはできず、窒息死する。”


と言っていたことも思い出し断念しました。

そんな思考過程を辿り、僕は、
”ロッカーもしくはタンスがいいのでは?”
という結論に辿り着きました。さっそく、自宅の近くのリサイクルセンターを朝一番で訪れました。家具売り場をウロウロと探しました。しかしながら、なかなか手頃なものがありません。ロッカーは幅が小さ過ぎ、タンスは下部が引き出しになっているものが多く、中で立ち上がることができないものばかりでした。
”ああ、やっぱりダメかな?”と思ったその時、”これだ!” という物が僕の目に飛び込んできました。

 それは、日本風のタンスという感じではなく、西洋風のクローゼットタイプのものでした。(鏡までついていて格好いい!)当然、下部に引き出しはついておらず、実に、入り心地によさそうなものでした。

”これに入りたい!”


と僕の心は叫んでいました。もちろん店員さんの目を盗んでこっそり入ってみました。
”よし!これなら、十分使える!”
早速購入を決意しました。値段は¥15、000でした。もちろん持ち帰りのできる大きさではなかったので、配達料¥750を払って家まで届けてもらいました。でもいざ部屋に入れるとかなり大きいです。というわけで、幸いうちは台所が独り暮らしにしては広い方なので、台所に設置をすることにしました。


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