〜あなたにも聴いてほしい名盤100〜

  1. STEVIE WONDER/INNERVISSIONS
    73年発表。ちょっとひねって、 リトルスティービー時代でも推そうかとも思ったのですが、 やはりこちらを。 言わずと知れた、スティービーワンダーのいわゆる、 70年代3部作の2番目のやつです。 (ちなみに、他の2枚は、 "TALKING BOOK"と"FULFILLINGNESS' FIRST FINAL") 平和なおっさんのイメージが一般的なスティービーですが、 実はかなり過激です。このアルバムでは曲作り、 サウンド作り、詞ともにかなりのキレを見せています。 激しい転調、リズムアレンジ、まだこの世に生まれてまもないシンセサイザーの音色、 そしてなんと言ってもその歌唱がすごい。 ゲットーの状況をうたった "LIVING FOR THE CITY"では、 今では信じられないくらいの野太い声が聴けます。 逮捕され連行され裁判にかけられていくSEが折り込まれたこの曲を聴くたび鳥肌が立ちます。 捨て曲無しです。初めて聴いたときも、”なんかすごい気がする。” と思いましたが、 年月を経て、僕自身が曲作りをするようになって、 聴き直したら改めて、このアルバムの完璧さにショックを覚えました。 ああ、もう”パートタイムラバー”なんか聴けない?
  2. NIEL YOUNG/AFTER THE GOLD RUSH
    ”バッファロー・スプリングスフィールド””CSN&Y”を経て、 ニール・ヤングが1970年に発表した作品。 定番と言えば定番ですが、 こんなデモテープのようなアルバムが代表作となってしまうところが、 ニールヤングのすごいところです。 本人から直接受け取ったような感覚さえ覚えてしまうようなラフな作りです。 単純な楽器のテクニック云々では決して語りきれない ”何か”を持っているアルバムです。 ”SOUTHERN MAN”のギターソロは、 本当にいろいろな意味ですごいです。 ピアノの弾き語り中心の地味な曲ですが、 "BIRDS"という曲も大好きです。 ニールヤングの代表作には、 ”ハーベスト”を推す人もいるけれど、僕は”アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ”派です。 こっちの方が、 ニールヤングが、”そこにいる”感じがするんだよな、どうしても。
  3. 井上陽水/もどり道
    今では脱力系の印象が強い陽水ですが、 初期のアルバムでは、 熱く張りのあるうた声が聞けます。 けっこう熱い曲もあるので、最近の陽水しか知らない人が聴くと、 ”えっ、これ誰?”なんて思うかもしれません。 このアルバムはアコギ弾き語り中心のライブアルバムです。 しかしこれが実に説得力があります。 ギターのストロークが実にセンスよく決まっており、 また最小限の伴奏で歌う陽水の歌声の存在感がすごいです。 うーん、いい声してるよなー。 ときどき勢いあまって裏返りそうになっているけど、 それがまた臨場感があっていいです。 あ、でも、MCは期待通りのキャラになってくれています。 (ちなみにスタジオ盤では、やっぱり”氷の世界”かな?)
  4. PRINCE(1958〜1993)/COME
    プリンスがプリンスと名乗っていた時代の最後のアルバムです。 (一部復活しているようですが。) その強烈なキャラクターのせいか、 世間的には下世話な印象が強い彼ですが、 とてもストイックな人です。 このアルバムを最後に彼は♀と♂を合わせたような記号へと改名し、 パワーあふれた作品を次々とリリースするのですが、 この作品ではそのモノクロのジャケットのイメージ通りの世界が展開しています。 よく彼の音楽は密室的と表現されますが、 これこそまさに密室ファンクです。 扱われている曲のテーマは幼児虐待だったり、 人種問題だったり、自らの存在に対する問いであったりと、 非常に重いのですが、 このアルバムはある種のヒーリングの作用を持っているような気がします。 それは、プリンス自身にとってもだし、 聴いている我々にとってもです。 淡々と続く打ち込みのリズムや、 ホーンやストリングの音色に耳を傾けていると、 意識が徐々に解き放たれて、 頭が空っぽになって行きます。 9曲目の”Letitgo”が流れて来る頃には、 新たな自分に出会えるかも知れません。 (プリンスにとっては、 それが、例の記号だったのかも?)
  5. RON SEXSMITH/OTHER SONGS
    郵便配達をしながら町を歩きながら、 歌を書きためたというロンセクスミスはカナダ出身のシンガーソング ライター。 エルビスコステロは、 95年に発表された彼のファーストアルバムを耳にして、 ”この先20年聴ける”と絶賛したそうです。 それから、2年後の、97年に発表された、 このセカンドアルバムは、 まずそのメロディーのよさ、 そして少し力の抜けた優しい歌声が印象的。 さらに、そのサウンド作りも個性的。 よく耳をすますと聞こえてくる、マリンバ、 スティールギター、ハープシコード、アコーディオン、 などなどの生楽器がその歌を嫌味なく彩っています。 この感じはどことなく、 かのビーチボーイズの”ペットサウンズ”にも通じます。 (日本盤の解説にはロンが、”ブライアンウィルソンに夢中”の旨書かれています。) プロデュースはミッチェルフレーム、 エンジニアはチャドブレイクというゴールデンコンビです。
  6. KEB'MO/KEB'MO
    90年代のロバートジョンソンと言ったら褒め過ぎかもしれませんね。実は僕はこの人の初来日公演を観にいったことがあります。 ベンハーパーとのジョイントという実においしい企画でこれはいかないわけにいきませんでした。 ドブロギター(金属でできてるやつ)を引っさげて現れて、 1曲目はストーンズでもお馴染みのロバートジョンソンのナンバー、 ”LONE IN VAIN”を弾き語りで。 おもわず客席から”渋い!”の声が飛びました。 このアルバムは彼のファーストアルバムで、知る人ぞ知る、 かのブルースの名レーベル”Okeh”の復活企画の第一段として発表されたものでした。 もちろんブルースベースなのですが、 意外にポップで、決してディープではありません。 リズムアプローチも明らかに、 ヒップホップ等を経由した現代的なもので、古臭さはありません。 全体的に広がりのあるサウンドが印象的で、 聴いていると思わずギターケース片手に、 ヒッチハイクでもして、 ちょっくらアメリカ大陸でも横断しようかという気分になってしまいます。旅のお供にも最適のアルバムです。
  7. SUZANNE VEGA/SUZANNE VEGA
    この人の一番有名なアルバムは、 ”SOLITUDE STANDING”というやつで、 ヒット曲”TOM'S DINER”や”LUKA”が入っています。 でも、こちらは85年の彼女のデビューアルバムです。 こちらもなかなよいです。 彼女によって爪弾かれるアコギを中心とした組み立てで、 最近の彼女の作品のようにインダストリアルな感じは薄いです。 控えめに加えられるエレキやシンセの音色、 遠くささやくようで、また、 つぶやくような彼女の歌声はなぜか聴くものに痛みを感じさせます。 決して派手ではありませんが、 氷のように透明でまた、”美しい”作品だと思います。 ところで、彼女の声はよく無機的と言われ、 売れるまではその部分が批判されていたのですが、 いざ売れてからは、”そこがいい”と言われるようになりました。 何が売りになるか分からないですよね。
  8. VARIOUS ARTISTS/ FOLKWAYS:A VISION SHARED A TRIBUTE TO WOODY GUTHRIE AND LEADBELLY
    88年に発表された、 ウディガスリーとレッドベリーへのトリビュートアルバム。 ”FOLKWAYS”というアメリカの老舗フォークレーベルが、 創業者の死によって存続の危機に陥り、 世界最大の文化施設、 文化保団体のスミソニアン協会が管理・運営にのりだすも、 商業的には苦しい状態。 そんな中、ボブディランが、CBSソニーに持ちかけて、 ”FOLKWAYS”救済のために作られたのがこのCDです。 売り上げは、”FOLKWAYS”救済の資金として、 スミソニアン協会に寄付されたということです。 僕はこのアルバムの存在は知っていたのですが、 実物を見たことはありませんでした。 しかし、先日、某中古CD屋の100円コーナーで発見して、 救い出してきました。内容的には本当に充実しています。 わりとスリーコード系の曲が多いのですが、 参加アーティストらのバラエティーとその解釈の力、 もともとの楽曲の魅力により飽きを感じません。 邦題としてつけられている ”アメリカの心”という言葉がまさにピッタリ当てはまります。 参加アーティストは、 ボブディラン、ブルーススプリングスティーン、U2、ブライアンウィルソンら。 このプロジェクトはまわりまわって、ディランの”GOOD AS BEEN TO YOU”、スプリングスティーンの”THE GHOST OF TOM JOAD”にも影響を与えている気がします。
  9. 桑田佳祐/孤独の太陽
    実はサザンがあまり得意ではない僕ですが、 桑田のこのソロは良かったです。 コーヒーのCMで使われていた”真夜中のダンディー”や、 長渕剛批判では?と話題になった、 ”すべての歌に懺悔しな!!”が入っています。 実に骨太な、1本筋の通ったアルバムで、 ”真夏の海でどーしたこーした”という世界ではありません。 しかしこの人からこんな歌が出てくるとは驚きました。 泥臭いテイストの曲が多く、でも、 決して”ど”フォークになっておらず、 洋楽テイストも決して消えていないです。 (ディラン辺りの感じかな。) ”うた”の説得力もあり。そして全体に漂う”昭和”の匂い。 いつもなら、 ”ああ、言葉遊びしてらー。” と聞き流してしまいそうなところでさえ、 深い意味をもって響いてくるから不思議です。この人には、 もっと、こういう方向でガンガンやって欲しいな。
  10. PAUL McCARTNEY/FLAMING PIE
    もうこれくらいキャリアのある人だと一枚だけ選ぶというのは難しいものがあります。 派手さで言ったら、いくらでも他のアルバムをあげられますが、 僕が今回これを選んだのは、 そのサウンド作りという部分にあります。 例えば最新のシンセの音色で彩られた ”フラワー・イン・ザ・ダーツ”などは、 実は僕の好みのサウンドとはややずれます。 このアルバムのサウンドの特徴としては、 そのほとんどの曲にアコースティックギターが使われている点です。 逆にキーボード系の音はほとんど聴こえないです。 地味なセットの中でもちゃんと聴かせてくれるのはさすがです。 (その点は”公式海賊版”(MTVアンプラグド)でも実証済みです ね。) ま、そんな中でもしっかりと”Beautiful Night”では、 ウィングス時代を思い起こさせるオーケストレーションが聴けます。うーん、最後はしっかりと本領発揮ですねえ。
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