僕は結局あれこれ薬を変えたり、 コーラを飲んだりして症状をごまかしながら、 何年も過ごしていた。 あるとき医者にこんなことも言われた。
”鼻の骨が少し曲っているね、手術するといいかもね。”
どうやら片方の鼻孔が狭くなっているらしかった。 それをやると花粉症も改善されるということも言われた。 でも費用は十万円もかかるらしかった。 とてもそんな金は払えなかった。 しかしながら花粉症(アレルギー性鼻炎)はだんだんと僕にとって深刻な問題となっていった。 ”よりよいうたをうたう”そのためには、やはり鼻詰まりはきつかった。 オペラなどの歌手なら発声が違うだろうが、 ポピュラー系の音楽をやる上では、 鼻も咽もけっこう”話している時のように”使わないとならないのだ。 結局鼻詰まりだと大音量でうたう分にはなんとかなるが、 より繊細なバラードなどはうまく表現ができないのだ。 学生生活も終わりに近付く頃には僕は、 ”音楽で食っていく”という決意を固めていた。 真剣に悩み始めていた。 手術も考えたが、金なんか無い。 保険料の支払いさえままならない奴がどうすればいいと言うのだろう!そうこうしているうちに、学生生活も終わりをむかえ、 春がやってきた。そう、スギ花粉の季節である。 学校もなくなり、バイトを掛け持ちして日々を食いつなぐ生活に入っていた。 思った通りに例年通り、鼻水が流れ始めた。 いつもいつも同じ薬局に行くのが恥ずかしいので、 普段とは違う薬局にアレルギー性鼻炎の薬を買いに行った。 そこで、僕は、根本的に僕のアレルギー対策の概念をくつがえすあるものと出会うのだった。