ミックスダウン編


  1. 狙いを絞って
    さて、MTRで録音された音はそのままでは、 MTRでしか聞けません。 これを、普通のカセットやMD,DATなどにダビングしてあげる作業がミックスダウンです。 この際に、それぞれのトラックの音量や定位を決め、 エフェクタをかけてあげます。
     このミックスダウンの作業は大変大事な作業です。 曲を生かすも殺すもミックス次第といえます。 是非このミックスダウンの際に注意してもらいたいことは、 ”狙いを絞る”ということです。 つまり、”何を一番聴かせたいか”です。 これは、”プロデュース”の項でも述べた、 ”自分達のアピールしたいポイント”にも関わることです。 MTR内の音は充分に気を使っていい音で録られているはずですが、 それでも、プロのエンジニアさんの録った音のようにはいきません。 また、ミックスに使えるミキサーもMTR内蔵のものか、 せいぜいそれと同等のサブミキサーくらいなものでしょう。 エフェクタだって何種類も使えるわけではありません。 つまり、残念だけどプロと同じように、 全ての音をバランスよく出すことは無理なのです。 ならばどうするか?そう、”全てを”という考えを捨てることです。 ”一番聴かせたいところに最大限の力を使う”ということです。 結局のところソロやバンドでうたものということになったら、 ”ボーカル”ということになります。 (一部、ボーカルを添え物として割り切っている音楽もありますが・・) バンドをやっていると、 とかく自分のパートばかりが気になって、 ミックスの際はフェーダーの上げあいになりがちです。 ところが、一般の人はうたものでしたらまず、 ”うた”を聴こうとするものです。 ポールマッカトニー顔負けの美しいベースラインが弾かれていたとしても、 そうそう気にとめてはもらえません。 ”ふーん。で、どれがベースの音?” なんてことを言われさえするかもしれません。 極端にいえば90%がボーカルで、10%が楽器くらいの頭でいるくらいでいいと思います。 ”だったら、俺の格好いいキーボードバッキングはどうなるんだ!?” 大丈夫です。 耳のいい人ならボリュームをあげなくても気づいてくれますよ。
     ミックス時はそれぞれのフェーダーを上げる方向に向かいがちですが、 大切なのはむしろ”下げる”勇気です。 これぞという”聴かせたいパート”が、 一番いい音で聴こえるように設定し、 他はそれを一歩下がって支えるという考え方をした方がいいです。 それから、きこえにくい音でもやたらと音量をあげるのではなく、 イコライザーを上手に利用してあげると、音が抜けてくることもあります。 (特定音域だけをあげたり、逆に特定音域をカットしてから、 その分だけ音量をあげたりする。) 同じような音域で複数の音がなっていると聴こえにくくなりますので、 できるだけ上手に棲み分けをしましょう。
  2. マスターを作る
    さあ、いよいよマスターを作りましょう。 DAT、MD、カセットなどいろいろ考えられますが、 できるだけ音質のよいメディアを使いましょう。 最高音質を求める場合には、少し前まではDATが主流でしたが、 最近はDATもあまり使われなくなりました。パソコンに取り込んでWAVやAIFのファイルにするのが、一般的になりつつあります。CD-Rの焼けるMTRであれば、それで焼いてしまえばいいですが、CD-RドライブのついていないタイプのMTRの場合、MTRとパソコンとつなぐために、「EDIROL UA-4FX」のようなUSBオーディオインターフェイスが必要となります。また、MTR自体にUSB端子のついているものもあります。 CDにしたい、という人はなんとしてもパソコンを入手したいところですが、 MDやカセットでもダメではありません。
     マスターを作るときには出来るだけ音のでかいものになるように、 努力しましょう。と、言っても、 マスターレコーダーの録音レベルを上げすぎれば音が歪んでしまいますので、 MTR側で工夫をしてあげましょう。 よく使われる手としては、 曲全体にコンプレッサーをかけてピークを抑えて、 全体のレベルを上げてあげることです。 ただしこの方法では、やや音質が変わってしまいます。 (この変化を好きな人も嫌い人もいますし、 曲にもよります。) それに”エフェクタはマルチ1台だけ”という場合は、 当然、トラック用に使われているでしょうから、 この方法は使えません。 そういう場合の奥の手は ”人間コンプレッサー”になることです。 自分達の演奏はここまで何度もプレイバックさせて、 詳細まで覚えてしまっているのではないでしょうか。 もし、 なんかの拍子で無駄に音がでかくなってしまっている箇所があったら、 そこを記憶するなりメモしておいて、その部分だけ、 自らの手でフェーダーを”ささっ”と下げてみましょう。 ”アホか”と思うかもしれませんが、 これひとつでデモテ全体の音量を上げることができるんですから、 ”聴いてくれる人”には最高のサービスになります。 (もちろん曲の”肝”となる部分、サビ前の派手なブレイクなんかは、 ある程度音量がいるところなので、除きますが。) ”DJコンプ”になってみて下さい。
     DATやMDはデジタルなので絶対オーバーロードにならないように、 レベルを設定して下さい。(と、いっても民生用のMDなんかは、 たまにオーバーする程度なら大丈夫のようですが。) カセットの録音レベルに関しては、 デジタルにくらべると、アバウトです。 多少オーバーレベルでも録音自体は可能です。 (音質はやや変わるけど) 自分のデッキの特性を研究してみて下さい。 ただ、ものによっては、 オートでレベル調整がされてしまうものがあります。 レベル設定のモードやつまみのないものは、だいたいこれです。 このタイプが意外とクセモノで、 要するに、 勝手にコンプレッサーをかけられてしまうという状態になります。 ”人間と違ってサビ前のブレイクだから・・”なんてことは、 考えてくれないので、 容量を越えたものは容赦なくつぶされてしまいます。 せっかくでかくしたところをつぶされては、 苦労した意味がありません。 このタイプを使い込んで、適正レベルを発見するのもありですが、 ここはひとつ”録音レベルの調整できるカセットデッキ”を、 入手するのがよいと思います。 リサイクルショップなんかでは、 オーディオマニアのおっさんなんかが売りに出した、 ”型が古いけどまだ充分使えるカセットデッキ”なんかもあります。 まあ、古いやつは回転速度が怪しかったりするので注意が必要ですが。 (購入時には、 聴き慣れたテープなんかをもっていって試聴した方がいいと思います。) マスターを作るときだけ、という限定で友人などから借りてもよいでしょう。 あと、もし”アルバム”という形でA面B面を分けるなら、 マスターはA・B別々のテープに分けた方がいいと思います。 テープは絡まったりする危険がありますので、 分けておけば確率は1/2になります。パソコンを使う人は外付けハードディスクなどを併用してバックアップをしっかりと録っておきましょう。パソコンのHDがクラッシュしたり、急に立ち上がらなくなることも充分あり得ます。特にオーディオデータは重いのでパワーや容量の小さいパソコンでは激しく負担をかけてしまっている可能性もありますよ。
     さあ、ここまで来たらあと少しです。 がんばりましょう。
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